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もしもの前に整えておきたい、お金と気持ちの終活

終活と聞くと、多くの方が「財産をどう分けるか」「遺言書をどう書くか」といった、お金の話を思い浮かべます。もちろんそれも大切な要素ですが、実際にご相談を受けていると、財産の整理以上に見落とされがちなのが「気持ちの整理」だと感じます。

お金の準備がどれほど整っていても、本人や家族の気持ちが置き去りになっていては、いざというときに深い後悔を残すことになりかねません。逆に、気持ちの整理だけがあってお金の準備が伴っていなければ、実務面で家族が混乱してしまいます。今日は、お金と気持ち、両方の側面から、終活として整えておきたいことをお伝えしたいと思います。

 

☆終活で見落とされがちな「気持ちの整理」

 

終活というと、通帳や証券、不動産といった「モノ」の整理に意識が向きがちです。しかし、実際にご家族からお話を伺うと、後になって重くのしかかるのは、モノよりも「気持ち」であることのほうが多いのが実務上よく見られる傾向です。

たとえば、「もっと感謝の言葉を伝えておけばよかった」「なぜあのとき、本音で話をしなかったのか」といった悔いは、財産の多寡とは関係なく、多くのご家族が口にされます。財産分配に不満がなくても、気持ちの行き違いが原因で関係がぎくしゃくしてしまう、というご相談も少なくありません。終活の本質は、財産の分配を決めることだけではなく、これまでの人生で大切にしてきた価値観や、家族への思いを言葉にして残しておくことにあります。感謝の言葉や、家族へのメッセージを一言でも書き残しておくだけで、残されたご家族の心の支えは大きく変わってきます。

 

お金の終活で最低限確認すべきこと

 

気持ちの整理と並行して、お金の面でも最低限押さえておきたいポイントがあります。まず一つ目は、資産の全体像の把握です。銀行口座、証券口座、保険、不動産、そしてネット銀行やポイント資産といったデジタル資産まで、どこに何があるのかを一覧にしておくことが基本になります。

二つ目は、負債の有無です。住宅ローンや連帯保証といったマイナスの財産も、相続の対象になります。プラスの財産だけでなく、負債も含めて全体像を把握しておくことが欠かせません。

三つ目は、各種契約や手続きに必要な情報の整理です。通帳やカードの暗証番号そのものを書き残す必要はありませんが、「どこに保管してあるか」「誰に確認すればよいか」が分かるようにしておくだけで、いざというときの家族の負担は大きく軽減されます。加えて、生命保険の受取人や、加入している契約の内容も、家族が把握していないケースが意外と多く、一度あわせて確認しておくと安心です。

 

☆エンディングノートと遺言書、何が違うのか

 

終活を進めるうえで、多くの方が混同しやすいのが、エンディングノートと遺言書の違いです。エンディングノートは、法的な効力を持たない備忘録です。財産の一覧や希望する医療・介護の方針、家族へのメッセージなど、自由な形式で書き残すことができます。書き方に決まりがない分、気軽に始められるという利点があります。

一方、遺言書は民法で定められた形式に従って作成する必要があり、法的な効力を持ちます。「誰にどの財産をどれだけ相続させるか」を確定させたい場合には、エンディングノートではなく、正式な遺言書として残しておく必要があります。エンディングノートだけを残して安心してしまい、実際の相続の場面では効力を持たなかった、という誤解によるトラブルも見受けられますので、この違いは特に丁寧にご理解いただきたいところです。気持ちの整理や情報共有はエンディングノートで、財産の分配を確定させたい部分は遺言書で、と役割を分けて考えることが大切です。

 

☆家族の負担を減らす準備の順番

 

では、何から手をつければよいのでしょうか。まずは気負わず、気持ちの整理から始めることをおすすめします。家族への感謝や、大切にしてきた価値観を書き留めるだけでも、十分に意味のある一歩です。

 

次に、資産や負債の全体像を一覧にまとめ、家族の誰が見ても分かる形にしておきます。最後に、財産の分配について明確な希望がある場合には、専門家に相談しながら正式な遺言書の作成に進みます。この順番で進めることで、気持ちの面でも実務の面でも、無理なく整えていくことができます。どこから手をつけてよいか分からないという場合は、専門家に相談しながら一つずつ進めていくのも一つの方法です。焦って一度にすべてを終わらせようとせず、少しずつ形にしていく姿勢こそが、家族の負担を減らす何よりの近道です。